
株式会社GEトラスト

グリーンエネルギーのディベロッパー
CEO Message
8月末、三菱商事が洋上風力発電事業からの撤退を発表しました。これは2021年に千葉県銚子市沖、秋田県能代市沖、同県由利本荘市沖の3海域での洋上風力発電所の建設・運営事業を国から落札したものです。2028年以降の完成を目指していたものの、円安、資材高、労務費の高騰を受けて事業を再評価。特に建設費が当初予測の倍以上になったため、このまま継続しても売電収入よりも総支出の方が大きく事業継続は困難との結論に至ったとのこと。
21年の入札は固定価格買取り制度に基づいたものでしたが、競合他社が1キロワットあたり20円程度に対し、三菱商事連合は1キロワットあたり11〜16円台という激安価格で、私も当時「そんなに安い価格を提示して、大丈夫なのかなあ」と思った記憶があります。当時は洋上風力が世界中に拡大して資材費が安くなり、洋上風力建設のノウハウも広まって事業コストが安くなるというバラ色の未来が想定されていましたが、実際には真逆の結果となってしまいました。2024年の発電量コストは、陸上風力が化石燃料より53%低く、太陽光も41%低いという国際再生可能エネルギー機関の発表です。これに対し洋上風力は、陸上風力より運用・保守に費用がかかり銅やアルミニウムの利用量が多く、物価高の影響も受けやすいため、依然として化石燃料より1割程度高い水準となっています。
アメリカではトランプ大統領が洋上風力を「目障りで割高、環境に有害」と一貫して批判しており、電気料金の値上がりの根源だとされています。三菱商事は25年3月期に洋上風力で524億円の損失を計上し、200億円の保証金も没収されます。一説には続ければ4000億円の赤字になったとの試算もあります。日本の最大商社が撤退するという一大時。日本の洋上風力の推進のためには、国の制度設計から見直さなければならない状況となっています。