CEO Message

2018年12月  カルロス・ゴーンと日本的経営

 

 カルロス・ゴーンが逮捕されました。博報堂ビジネスマン時代に日産改革をリアルタイムで目の当たりにし、2001年出版「ルネッサンス」に経営書のバイブルとしてポストイットを貼りまくった私にとって、大きなショックでした。「ルネッサンス」ではコミットメントという言葉がキーワードとなっており、ぬるま湯日本的経営の対極としてビジネス界で大流行。私も肩を怒らせて部下にコミットメントを強要したものです。今でいうパワハラですね(笑)。

 

 多くのジャパニーズ・ビジネスマンが憤りを感じているのは、有価証券報告書のごまかしよりも、世界の各都市に豪華な住まいを日産経費で購入したり、家族旅行に会社のジェット機を使って経費を持たせたりといった一連の公私混同行為ではないでしょうか。次々にひどい話が出てきて、「ここまでやってたのか。じゃあムショ暮らしもしゃあないやん」。大企業の社員は、「コンプライアンス」なる得体の知れない呪文を会社から押し付けられて神経をすり減らしているのに、トップがこれかよ「けっ」という感情ですね。

 

 大企業に対し中小企業の場合、コンプライアンスなんぞ流暢なことを言っている暇はありません。日々売上げを上げ、社員と自分おまんまが食える儲けを稼ぎ、明日へと生き残っていかなければならないのです。カアチャンの力も大きな戦力。必然的に公私一緒くたのファミリー経営になっていく。私はそれで当然だと思います。プライベートカンパニーなのですから。日産は上場しているパブリックカンパニーなのですから、公私混同は許されません。いかにゴーンさんが、昔瀕死の日産を救ったのだとしても、です。

 

 SONY創業者の盛田昭夫氏は、「日本で成功しているのは、全社員に運命共同体意識を植え付けた会社である」と言ったそうです。ここに日本企業の特質がある、と私は思います。世界と比べ、日本は社長とヒラ社員の給与格差が極めて少ない社会です。戦争で負け裸一貫になった日本は、戦前にあった身分格差がチャラになると同時に、社長も現場も一緒に頑張る「運命共同体=モチベーション共同体」として経済成長を成し遂げた、というのが私の見立てです。そこの意識が、フランスという超階級社会でのし上がった人物とは根本的に異なる。特にゴーンさんの場合、辺境の地レバノンからの成り上がり者なので、金銭に対する執着が相当強い印象です。

 モチベーションシェアの組織は明らかに戦う力を増すのですから、みんながみんな、社員をたくさんクビにしたCEOが天文学的な給料をぶんどる「グローバル経営」なるものを導入する必要はないと思います。もっとも、盛田さんの半世紀後輩である平井一夫元CEOの昨年度報酬は27億円だそうですから、会社の文化とは変容するものなんですね。